〜もしも、こんな○○シリーズ〜 Case 赤壁
黄蓋の離反、そしてこの赤壁という舞台……そこから俺は一つの結論を見いだした。
そして、その予想をすぐさま華琳へとそれとなく伝えた。
「成る程……それで?」
「悪いが、今回だけは絶対に手を打つべきだ」
その言葉からはじめ、俺は延々と華琳への説得を続けた。
努力の結果か、俺の長きにわたる演説の終了と同時に華琳は息混じりに口を開いた。
「はぁ……わかったわ。黄蓋をここへ」
華琳がそう告げ、しばらく立つと兵に連れられた黄蓋さんが現れる。
「一体何用じゃ? 曹操殿」
突然の呼び出しのためか、多少訝った様子を見せる黄蓋さん。
それに対し、あくまで余裕の表情――というよりも不適な笑みを浮かべている華琳。
「えぇ、貴方も我が軍の一員となる以上、してもらうことがあったのを思い出してね」
「ほぅ、それはどのようなものなのかの?」
興味深いと言うよりは、僅かに眉を吊り上げ警戒心を露わにしながら尋ねる黄蓋さん。
俺も華琳が何を言い出すのか余藻も出来ず、ただ喉をごくりと鳴らすのみだった。
「ふふ……この男から天の祝福を受けるの」
そう言うと、華琳がこちらをちらりと見やる。
一方の黄蓋さんも、首を傾げながら俺の方へと鋭い視線を向ける。
そして、もう一度華琳の方へと向き直ると首を傾げる。
「よく、意味がわからぬのだが?」
「そうね、回りくどいのも良くないわね。率直に言うわ、一刀に抱かれなさい」
「なっ!?」
「な、何じゃと!」
華琳の提案に俺と黄蓋さんは思わず大声をあげた。
「いったでしょ、我が軍に降った以上、天の祝福を受けて貰うと」
「ぐ……しかしじゃな……」
「少なくとも、我が軍の名だたる将は受けたわよ」
「か、華琳、それはいくらなんでも……」
「一刀は黙ってなさい。さぁ、どうするの?」
そう言うと、もの凄く意地の悪い笑みを浮かべる華琳。
正直、俺にも何を考えているのかわからない。
そして、黄蓋さんはしばらく悩んだあげく顔をあげた。
「……わかった。さっさと済ませるとしよう」
「いいのか?」
予想外の答えに黄蓋さんに尋ねるが、真剣な瞳をしながらもふっ鼻で笑われる。
「お主のような若造に、この儂を満足させられるだけのものがあるか見てやるわい」
そういうと、黄蓋さんは呆然とする俺の腕を引いて指定された場所へと向かった。
なお、それから何時間にもわたる行為により、黄公覆が動けなくなり赤壁の戦いにおいて多大な影響を及ぼしたことは言うまでもない。
『この逸話は、後に数多の戦場を武力なしで納める手法、"種馬術"そのはじまりである』
そして、この種馬術は、後世の歴史家たちから『戦わずして勝つを最善とする兵法、その最たる術である』とまで言われるほどの評価をされることとなるが、それはまた別の話である。
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